ブログ小説「ノベルる」 › 新規投稿 — WordPress
ブログ小説「ノベルる」 › 新規投稿 — WordPress
syouseutu

~プロローグ~
~もし、お前と出会ってなかったら俺の人生変わってたかもな・・
本当に出会えてよかったよ。ありがとう~
まだ雪の積もる冬。
彼は親友の前でそんなことを口にした。
彼ももう26歳で会社に勤める立派な大人だ。
そんな大人が真顔でこんなことを言ったらちょっと引かれると思いつつも彼は親友に呼びかけた。
しかし親友は無表情のままじっと彼を見つめていた。
あたりは一面の銀世界。気温は氷点下を下回る気温だ。
しかし彼の親友は寒い素振りひとつ見せずにじっと彼を見つめていた。
しかし親友からの返事は待てどもこない。いや、くるはずもない。
彼は今、
眠っている。そしてその眠りから永遠に目覚めることはい。
今日はその親友の命日。あまりにも早い死だった。
彼の死から10年たっているにも関わらず彼の墓は綺麗に掃除され、雪もどかされていた。
恐らく親友の妹だろう。彼の妹は彼が亡くなって10年もの間一ヶ月に一回必ず彼の墓参りをしていた。
そして彼もまた三ヶ月に一回程度墓参りをしていた。
さすがに10年は続けることはできなかったので今日は久しぶりに親友と対面する。
「まったくこんな寒い日に墓参りなんかさせやがって群馬の冬だって結構寒いんだぞ」
彼は愚痴をこぼしながら墓前に花を供えた。
きっと親友は天国で「いい気味だ」とでも言ってほくそ笑んでるだろうと思い彼は苦笑した。
「そうだ。今日は中学からの約束を果たしにきたんだ。」
彼は鞄からカップ酒を取り出し親友の墓に供えた。
「中学のとき一緒に飲もうって言ってたからな。ここで一杯やろううや。」
中学時代からの約束が10年越しにようやく果たされた。
「あっ、そうだ、あとこんな懐かしいものを持ってきたんだ。」
彼は親友の墓に白いバトンを供えた。
もう大体の塗料ははげて錆びついているバトン。
他人からみればただ汚いだけのバトンだが、彼らからしてみれば青春の代名詞とも言えるバトンだった。
その思い出は彼らの心に深く刻まれ10年たった今も色あせることのないものだった。
そしてまた彼は親友に問いかける。お前と出会って10年だなと。
そして彼は思い出す。親友と送った日々を・・・
~プロローグ~
恋なんかじゃなかった。
ただの憧れ。
なのに、裕也君と離れ離れになって3年。
私は今でもあなたを忘れることができません。
頬を染めながら交わした少ない言葉。
そして教えてくれた二人だけの秘密の本。
幼かった私がほんの少し心をときめかせた瞬間。
弓道をがんばる姿を遠くから見つめる楽しみ。
目を閉じると浮かんでくる甘い笑顔と少しだけ低い声。
ただそれだけの思い出なのに、私は過去に心を奪われているよう。
どこか現実を見つめきれないでいる。
心のどこかで会いたいと願う自分がいた。
ねぇ、裕也君は私のこと覚えていますか?
この日の僕の記憶は、病院の一室から始まった。
「じゃあ…治らないんですか?」
両親が絶望しながら聞いた。
「ええ、お子さんは今日死にます。」
僕は一指し指で指されて、呆然とした。
「死…ぬ?」
僕の心はあまりに脆かった。
僕の中に絶望が滾滾と湧いてくる。
堪えきれない涙が、どっと溢れてくる。
どうしようもない悔しさが絶望と混ざる。
「君は今日の夜、時間は分からないが死ぬよ。」
「もう僕には…明日を見る事はないのかよ。」
僕は病名も、症状も聞かずに走りだした。
随分、我武者羅に走ったみたいだった。
僕は見覚えのある公園に辿り着いていた。
小さな頃は毎日のようにここで遊んでいたが、今はこれっぽっちも思い出が無い。
何でここに来たのかをぐるぐると考えていると、一人の少年が近づいてきてこう囁いた。
「君はここに居るべきじゃない。」
その言葉を聞いて僕はまた走り出した。
どこに行こうとしてるのか全然分からない。
僕は僕の心に聞いて動いてるんじゃなくて、記憶で動いていた。
そして僕の記憶は、僕を学校に連れて来た。
校門の前で立ち尽くす。
「学校は嫌いなのに何でここに来たの?死ぬ日だって勉強しろって言うのか!
おい、僕!お前は狂ってるよ。僕はゲームとか漫画を読みたかったんだ。」
チャイムが聴こえて我に返った。丁度、授業が始まった所だ。
今日ぐらい、と僕は教室には行かなかった。
しかも僕は学校道具も無いし、制服さえ着てなかった。
パジャマだった。持ち物は携帯だけだ。
学校の中や外をぶらぶらする。
それも5分休みにはばれてしまって、僕は友達に見つかった。
僕の姿を見てぎょっとしている。
「え…?お前…今日は休むんじゃなかったのか?」
「何か来てしまった。」
と僕はニッコリするが、彼らは誰一人笑わなかった。
この格好も笑っても良い筈だ。何で笑わない?
「そっか。なぁ、放課後にさ。俺達、行きたい所があるから着いてきてくれよ。」
「いいよ。」
何時間も僕と彼らは学校中をぶらぶらした。
でも僕らを見かけても、先生方は何一つ注意をしなかった。
僕はその異変を友達に質問してしまった。
「ねぇ、変だと思わないか?」
「うん?何が?」
「僕達を見ても誰も注意しないよ。変だ。」
「見てねぇだけだろ。」
「………」
本当にそうだろうか。僕は考えた。
こんな人数で行動してるのに、誰一人気がつかない訳が無い。
僕にはまだ分からなかった。皆が僕に気使っていたのを。
そして、4時間目は出席した。
僕はやっぱりパジャマのままだった。
そのせいで僕は注目の的だった。
目立つのは好きじゃない。僕は恥ずかしかった。
でも授業で何を話しているのかさっぱりだった。
もう何もかも上の空。
友達も先生も家族も…居場所もするべき事も勉強も…。
何が起こったって僕の知った事じゃない。
だって今日、死ぬのだから。
給食の時間になっていた。僕のお腹も唸っている。
給食は僕の好きな物ばかりだった。
林檎に栗ご飯に豚汁に…あげパンまで付いてきて。
よく考えると主食が二つもあってこれもおかしかった。
食べながら僕は考えた。そして決めた。
僕が今日死ぬと言う事を隠し通そうと。
誰かに看取られる事なく一人でひっそりと死のうと。
心の中で泣いた。本当はそんなの、絶対嫌だった。だって哀し過ぎる。
出来る事なら死にたくなんかないのに。
ズキズキと頭が痛む。何で僕なの?
友達に告げられず、僕がひっそりと死んだ後、僕は忘れ去られてしまうの?
そんなの酷すぎる。嫌だ。死にたくなんかない。
あげパンに噛り付いた途端、僕の頬を一筋の涙が流れた。
こんなの…僕の人生じゃない。
僕の涙に気が付いて、向かいに座っていた親友が驚いた表情を浮かべる。
「な、泣くな。元気出せよ、ほら。」
ティッシュを片手に僕を慰める。
彼はぼうっとする僕の顔をティッシュで拭いた。
妙な沈黙に包まれたまま、給食時間は終わった。
昼休み。皆が外でサッカーしようと誘ってくれた。
「いや、今日は一人でいたいんだ。」
誰かといると心が痛くなる。誰かと笑うと心に穴が空く。
だってその誰かはきっと“明日”は他の誰かと一緒にいるんだろう。
だってその誰かはきっと“明日”は他の誰かと笑うんだろう。
辛いだけじゃないか。僕がいない世界なんだ。僕には明日が見れない。
今日で何もかも終わりなんだよ!
怒りまでこみ上げてくる。つくづく最低な奴だと思うけど。
誘ってくれた子は「そっか。」と哀しそうな目をして「じゃあ、明日やろうぜ。」と言った。
「そうだね。」
僕は引きつった笑みを浮かべて手を振る。
彼らも手を振って外に飛び出していった。
教室にも何人か残っていた。だから僕は、とぼとぼ歩きながら屋上へ向かった。
鍵が開いていないのは知ってる。
埃臭いし蜘蛛の巣ばっかりだし、汚いけど、誰も来ない。
独りの場所。自分だけの空間。
僕は地球最期の日が来たかのように絶望した。
そのまま、昼休みを過ごし、五時間目もそこにいた。
何時の間にか6時間目も終わっていて、僕はここで死のうかと考え始めていた。
足音が聴こえる。誰かが上ってくる。
それは、朝話した部活仲間だった。
「なぁ。行きたいとこあるんだって。一緒について来てくれや。」
彼は僕の手を引き、階段を下りて行く。
僕は中学3年生だからもう部活はない。でも彼はグラウンドの方に僕を引いていった。
僕が唯一好きだったのは野球だった。
家にも有名な選手のポスターとかがあるし、プレイするのも観るのも大好きだった。
でも好きなのとプレイするのとは全然違う。
僕は野球が下手だった。と言うか、運動音痴だった。
三年間頑張って続けたけど、あまり試合にも出られなかったし、出ても打てなかった。
よく友達に馬鹿にされた記憶がある。
「野球部なのに野球下手なんてダッセー。」だってさ。
知ってるけど、どんなに練習しても上手くなれなかったんだ。
野球に嫌われていたのかな。
そして、グラウンドに通じる細く長い通路を歩いていく。
窓に真っ赤な夕日が反射して眩しかった。
あぁ、もうちょっとで一日が終わるんだな、と思った。
僕は焦った。もう少しで死んでしまう。もう時間が少ない。
怒りもこみ上げてきた。
「ねぇ、どこまで行く気だよ?僕はもう野球なんてしないぞ!」
彼に八つ当たりした。
「ねぇったら!僕はね、今日死ぬんだ!こんな日に野球なんかしない!聞いてるのか!?」
捲くし立てて喚いた。涙で世界が滲んで夕日も滲んで見えた。
「いいから!…いいからついて来い。」
彼はグラウンドの脇にある部室に連れていった。
ドアを開くと同じ学年の部活の皆が着替えていた。
共に大会を戦った部員の皆。ライバルでもあったけど。
僕は皆が大好きだった。
「お、来たな。野球だろうぜ!」
キャプテンだった子が言った。皆も続いてやろうやろうと騒いだ。
「でも…。」
でも、ユニフォームが無かった。
それに僕は野球をしないとさっき宣言した。
僕はパジャマを引っ張って見た。こんな服で打つのも走るのも嫌だった。
「きっと皆でこうやってやるのも最期だろうし…お前もユニフォーム着て来いよ。
待ってるからさ。」
僕は肯くと、慌てて走りだした。全速力で家まで走る。
息を切らしながら家に入ると、急いで階段を上り、僕の部屋に入る。
確かタンスの三段目に入れた筈だった。
やっぱりそこには真っ白なユニフォームが入っていた。
さっさと着替えると僕はある事に気が付いた。
「…もう母さんにも父さんにも会えないかも知れない。」
急いで下に行くと父さんと母さんは玄関で待っていた。
「父さん…母さん…。」
「野球しに行くんだろ?父さんが送ってってやろう。良いだろ、母さん?」
「ええ、日が暮れる前には帰ってきなさいよ。」
母さんは莞爾と微笑み、「二人とも、いってらっしゃい。」と言った。
僕は涙声で「行ってきます。さようなら。」と詰まらせながら言った。
父さんは僕の背中を押し、母さんが泣くのを見せないように玄関を出た。
そして車に乗り込み、父さんは車を飛ばした。
学校に着くと、もう日は暮れて真っ暗になっていた。
誰もいないかな、と思った。
でもグラウンドは輝いている。ライトアップされていた。
「さぁ、ナイトゲームの始まりだ!」
マウンドに立つ僕の親友が、指を指して僕を指名した。
僕は準備運動も無いまま、お気に入りのバットを手にバッターボックスに立った。
ヘルメットの傾きを直し、バットを親友に向ける。
「来い!!」
調子は最高さ。武者震いかな。良い気分だ。
バットをきゅっと握る。
誰かが実況をしている。
「ピッチャー…振りかぶって投げました!」
それ程速くないストレートだ。
僕は思い切り振った。だけど、やっぱり当らなかった。
勢い良く、キャッチャーグローブに収まる音が聴こえた。
「ストラーイク!ワンストライクです。」
僕はやっぱり打てないよ。だって才能がないんだもん。
「ピッチャー振りかぶって、投げた!」
次もストレートだった。僕はそれを見送った。
僕の目の前を、風を斬るようにボールが通っていった。
「ボール!ワンストライク、ワンボールです。」
「どうした!お前はそんなもんじゃないだろ!」
僕は叫んだ。
「本気で来いよ!それじゃないと、僕が死にきれないじゃないか!!」
また何も知らない相手に「僕が死ぬ」と言ってしまった。
だけど彼は動揺しなかった。
「分かった。本気で行くよ!」
「来い!!」
急に涙が溢れてきた。
この一球が僕の最期の一球なんだと思った。
僕の心臓が…脳味噌がそう訴えているんだ。
まだカウントはあるのに…。
親友のボールはスローモーションで見てるかのように遅かった。
お陰でやっと僕に打てる球が来た気がした。
ボールが向かってくる間、色々な事が頭を巡った。
次から次へと思い出が蘇った。
僕の目は涙でいっぱいの筈なのに、世界は滲んでいなかった。
僕はタイミングを見計らい、バットを振った。
カキ―――――――ンッ!!!
「打った、上がった!入るか?入るか?入った~!!」
実況が大声で叫んだ。
「ホームラン!!!!」
その音を最期に僕の耳は機能を失い、
ボールがフェンスを越えるのを最期に僕の目は静かに閉じ、
バットを振り終えるのを最期に僕の身体はゆっくりと後ろに倒れた。
最後の力で口を動かす。
「ありがと。」
あらすじ
記憶喪失で全てを忘れてしまった少年グレン。唯一知っている人物の中のティアは血の繋がらない家族であり、子供ながらも最愛の恋人だった。
だが…ある事件に巻き込まれて死んでしまった…。
大好きな彼女を生き返らせようと、伝説の『全ての願いが叶う地 ホワイトフォレスト』を探して世界中を回る。しかし、その手掛りは全く無し。
代わりに自分が『世界の中心にある国』を滅亡させた最終兵器の一人と知る。彼は影や軍に狙われつつも「こんなものはこの世にあってはいけない」と自分も消える覚悟で伝説の『ホワイトフォレスト』にこの世からウェポンを消す事を願う為その地を探すことにした。
グレンの望みは、ウェポン集団『Time apostle(時の使徒)』に知られ怒りを買うことに。
そしてその怒りは世界征服となって国や街を襲う。
世界の危機に立ち向かう為、『反軍組織アライヴ』と共に敵に立ち向う。
しかし…彼の“本当の望み”は、彼の中にいる『怪物』の能力で忘れてしまった。
自分の心と身体を犠牲にして世界を救うグレンの運命は!?
愛する人の為、世界の為命懸けの大冒険ファンタジー。
第零章[真戦終来]
――胤歴1373年
「まったくもって冒涜だな……」
階段を駆け上がりながら少女は呟いた。螺旋状に作られた階段は、先に何があるのかを少しだって教えてはくれない。だが、敵の襲来を目前まで感じることは困難であるが、その反面こちらの様子も悟られずに済む。
少女が階段を駆け上がっているその場には、彼女の足音はまったくしない。これは彼女が持っているひとつの能力である。だが、さすがに服や腰に下げた剣が擦 れる音を消すことは出来ないために、多少の音はやむを得なかった。しかしこのぐらいでは、よほどの敏腕な兵士でない限り、恐らく気づかれることはないだろ う。
そのとき、少女の耳に、上階の方から数人の足音がだんだんと近づいてくるのが聞こえてきた。静かに足を止めて先の様子を窺う少女。この閉鎖 的な階段では隠れる場所などなく、ましてや引き返すことも出来ない、迎え撃つしかないだろう。そう思い、少女は鞘から剣をゆっくりと抜いた。微かな光に輝 くその刃は、まさにその強さを物語るかのようである。
上から伸びる影と共に、少女の目の前に3人の兵士が現れた。だが少女は動じる様子もなく、素早く反応する。兵士が行動を起こす前に、剣を素早く振るった。
「……」
無言で少女が振るった剣から突如、赤く光る空の刃が飛び出した! まばゆい光を発しながらそれが兵士の手に直撃する。すると、一瞬で兵士ひとりの手にあった剣ははじけ飛んでしまった。その隙を逃さず、残りふたりに対しては直接、剣を振りかざす。
有無を言わさず、決着はものの数秒でついた。少女は3人の兵士の亡骸を飛び越して先を急ぐ。少女には、普通の兵士如きでは相手にならないだろう。
*
ようやく螺旋階段を上りきり、彼女の視界が開けた。この城の最上階に位置する、王との謁見をする広場である。城の外見からは到底考えられないほど、とてつもなく広い部屋であり、天上の高さも尋常ではない。まるで天井は無いかのように、雲のようなものさえかかっている。
「噂は本当だったの……。これがすべての王に共通する力……」
この部屋は完全に空間と要領を無視した構造である。王が持つと言われている力の一部を使ったものなのだろう。信じがたいが、王族はやはり少女よりも力は遙か上だった。
「おりゃああ!」
突如、大きな声とともに、少女が上ってきた反対側の扉が荒々しく開いて数人の兵士が吹っ飛んできた。そのあとに、ひとりの屈強そうな男が歩いてくる。
「えらく遅かったじゃないか」
「そう堅いこというなや。言い返す言葉がない」
男は、剣についた鮮血をサッと払いながら笑った。少女はそれを軽くうけ流すと、広間の中を歩き出した。堅い大理石のような床が、彼らの足音を大きく反響させる。少女がとんとんっ、と床を剣で叩く音は、どこまでも広がる木霊のように飛んでいった。
「つれないねえ……」
歩き出した少女の後を男は追う。彼らがあるく広場は、少なくとも数千人が入れそうなぐらいに大きい。各壁には、この世界に伝わる9属を司る神の絵がいくつも描かれている。それぞれを象徴する特徴的なフォルムだが、ここまで鮮明に描かれているものは他にないかもしれない。
「さながら神の神殿って感じか?」
壁をキョロキョロと見回しながら、男が呟いた。しかしあまり鑑賞している暇もなかった。未だに作戦は遂行中であり、いくら内部に潜入出来たとはいえ、これからなのだ。
「下の状況はどうなんだ?」
周囲に気を配りながら、少女がちらりと男を見た。
「下? 今頃は制圧出来てるはずだ。そこまで抵抗が無かったからなあ」
「抵抗が無かった……? ということは……来るか!」
少女は立ち止まって、剣を構え直した。床を這わせた際に、剣の先端がその床を引き裂き、一筋の後を残す。
それと同時に、広場の奥から数え切れない程の兵士が慌ただしく彼らのもとへ向かってきた。たちまち少女と男はその集団に囲まれる。だが、ふたりとも動じる 様子はない。男の方に関しては軽く笑いを浮かべてすらいた。余裕の表情で、どうしようもないな、とでもいうように手の平を軽く上にあげた。
彼らを囲んだ兵士の中から、ひとりの兵士がふたりの前へ踊り出た。その見た目と威厳からして、頭領であることは間違いない。
「悪いことは言わない。もう大人しく投降したまえ」
そういうと、頭領は兵士に指示して、彼らが持っていた剣を鞘へと仕舞わせた。交戦の意志は無いということだろうか。それでも少女は顔色一つかえず、また微動だにしない。
「嫌だって言ったらどうすんだ? 俺たちを串刺しにするか?」
男が剣をゆっくりとまわす。風を切る音が、その剣の扱いが尋常ではないことを示している。風に触れただけで斬れてしまいそうなほどだ。だがそれにも動揺せずに、頭領はやれやれ、と頭を振った。
「交渉には応じないか……。ならば仕方がない」
頭領が再び剣を抜いた。それと同時に、周りのすべての兵士も一斉に引き抜く。場に緊張が走り、一瞬だけすべての動きが止まった。
「鎧袖一触とも知らずに……。頼むけど、足は引っぱらないでね」
少女が視線だけを男に投げかけて言った。まんざら冗談そうでもないその言葉に、男は苦笑いをする。確かに男は、少女の力には及ばないだろう。しかし一般から見れば、彼らはどちらも強すぎる存在であることは間違いない。
そして、ふたりは同時に動き出した――。
例によって赤川次郎作の「間奏曲」ですがショートショートが27編収録されており、一作一作がとても楽しめるようになっています。
今さら僕が言うのも何ですが、本当に短い作品ながら落ちまでしっかりつけられて面白く読めるのはすごいの一言です。
解説を読んでいて作品のタイトルは一般から募集したということで、さらに驚きました。
赤川さんの底が見えないそのスゴさは小説に神がいるなら神でさえ驚いていることと思います。
めざめ――。
もう何度読んだか分からないぐらいに好きな小説です。
借金の返済に困ったある男が兄を頼ったわけだが断れたので兄夫婦を殺害、というところからはじまって、何も知らずに遠足から帰ってきた娘はそのかわりはてた両親を見てしまって心を閉ざしてしまいます。
同じ時期に近くの交差点で12歳の少年が交通事故を起こし亡くなりました。同時期に、場所も近くということで不思議なことが起こります。殺された両親のひとり、母の方で美知代といいますが娘を思う気持ちでよみがえります。ただよみがえった先が自分の肉体ではなく、近くで起きた交通事故でなくなった少年、修の肉体だったのです。
この美知代は修として生まれ変わってからはいかにして娘の美沙とどう接点を持つかということで物語は進行していくのですが、なんというか母の子を思う気持ちというのはどんな思いより強いんだなということがよく分かりました。そして同時に自分の親が自分に対してもそう思っているんだなと思うと、文句ばかり言えないなと思います。
このめざめが面白いと思うのが以前生まれ変わりというテーマのゲームをしてその影響を受けたためか生まれ変わりということを少し信じるようになって、ちょうどそれがめざめという小説で疑似体験しているかのように思うからなんだと思います。
美知代は美沙に自分が母だということを知らせることができるシーンがありますが、すでに死に間際でした。せっかく生まれ変わって美沙と出会うことができたのに、でもまた別れなければならない。2度も離れ離れにならなければならない美沙にとってはどれほど辛い思いだったか。
美沙は最期に交わした美知代からのちゃんとやっていっているか心配だったという気持ちをしっかりと受け取ってこれからまたひとりでがんばっていかなければならないけど、そのメッセージはきちんと伝わったと思います。お別れが言えなかったという美知代の気持ちやもう一回お母さんと言ってなど。まさに泣けます。
ずっとずっとこのめざめを語り続けたいと思います。
赤川氏の小説は毎日の通勤時間を利用して読んでいます。
今回は悪妻に捧げるレクイエムで、異なる経歴の持ち主が集まってひとりの作家として小説を書いていくというものです。
日ごろから妻への不満がたまってそれを題材にできないか? ということで持ち上がった。それが妻をどうやって殺してやろうかというものだが、今回何が面白いというと冒頭の通り異なる経歴が集まっているわけだから、それぞれの書き方に特徴があってひとりは小説家。もうひとりはシナリオ、インタビュー形式、詩人といった具合に。とくに赤川氏のシナリオははじめてだったので、新鮮だった。
もうひとつ面白いと感じたのは、書いた小説に似たようなことが周囲にも同様に起こるというところです。しかし実際にどんなに嫌な妻であっても最後は妻を許してしまう男っていうところがほほえましくてすっきりした読後を味わえました。
まだ読んでいないなら一度手にとって読んでみてはいかが?
ミクシイに参加しているのでそちらで日記を時々書いていましたがここでははじめてです。
とくにかわったことはないのですが小説の話を少し――。通勤時間を利用して小説を読んでいるのですが最近はもっぱら杉原爽香のシリーズを読んでいます。毎年定期的に刊行されそれにあわせて登場人物もまた一つずつ年を重ねていきます。
小説の終わりにほかの作家が解説を書いていますがそこでよくあるくだりが、小説の中で設定をかえたり年を重ねるということは小説の世界ではあまりないとのことです。それは書く側の都合のためみたいです。そういう事情を知るとまた小説の面白さがでてきます。
今読んでいる爽香は29歳。布子と河村の夫婦仲がどうなっていくのか楽しみです。
Copyright (C) ブログ小説ノベルる All rights reserved.